今年度補正予算と来年度当初予算で国公立大学の運営費交付金正常化の動きが見られます。
財務省の抵抗を排し、長期的にこの方向性が保証されなければ、国公立大学の崩壊は致命的なものになることが予想されます。
これに関連して、国公立大学の内情をご存じない一般の方の認識を混乱させるような議論が目立つため、予算の違いについて整理しておきます。
結論として、運営費交付金の不足を競争的資金等による研究助成で補完することは制度上不可能であるということです。
財務省は任意の予算を削減することに注力しており、この件に関しても運営費交付金の不足を科研費等の競争的資金で代替させることが可能であるかのような虚偽情報を流布することによって、民意の混乱を企図しているようですが、制度の実態としてそうはなりません。
よって、運営費交付金の正常化が遅れることすなわち国公立大学の組織基盤の崩壊と同義となります。
1. 運営費交付金
運営費交付金は、使途を制限されない形で各大学に配分される基盤的経費です。
通常の運営に必要となる経費、特に安定的な形で雇用される教職員の給与は基本的に運営費交付金から支出されます。
ここ数十年にわたる運営費交付金の削減により、教職員を必要数採用することができず、組織基盤が崩壊してしまった事例が後を絶ちません。
2. 競争的資金等による研究助成
ここで言う資金の事例としては、
科研費(日本学術振興会)
安全保障技術研究推進制度(防衛装備庁)
JST-Mirai、CREST、ERATO、さきがけ(科学技術振興機構)
新エネルギー・産業技術総合開発機構公募事業
等による競争的研究助成、または民間からの研究助成等が該当します。
これらの予算では、高々有期雇用の任期制教職員を雇用できるのみであり、安定雇用の教職員は採用できないので、大学の人的基盤を支えることは不可能です。
なお、大学では任期付き教職員が担当できない業務が多数存在し、さらに教授以上でなくては触れられない情報や担当できない業務も存在します。
以上のことから、競争的資金は運営費交付金を代替しません。
運営費交付金の削減は、組織基盤の崩壊と同義となります。
また、運営費交付金の正常化による大学の組織基盤立て直しがなければ、これに基づく研究基盤・教育基盤も瓦解している状態になるため、競争的資金等の研究助成による所期の効果を期待できなくなります。
p.s.
なお、左派系など一部では「運営費交付金を削減して大学を締め上げ、``軍事研究"に誘導している」なる陰謀論も散見されます。
上記の理由により、私見ではこの論理は成立しないと考えます。
運営費交付金が削減され締め上げられているのは事実ですが、防衛装備庁の研究助成に当たっても、運営費交付金の代替にはならないからです。
防衛装備庁による研究助成の公募要領を見れば確認できることですが、公募研究課題にある程度の括りが指定される程度で、基本的に同予算は科研費とほとんど同じものです。