まだ他科目の処理があり期末試験の採点などには手を付けられていませんが, 色々と感じたことを.
1. ラプラス変換の「表」
機械系に限らず, 制御理論等ではラプラス変換は頻出かつ必須の計算テクニックとして教えられているようです.
制御理論の教科書をいくつか眺めてみましたが, 当然そこでもラプラス変換の定義は教えられており, 変換「表」はあくまでも基本的な関数の変換・逆変換を求めるための手段になっています.
(なお, 逆変換を計算によって求めるには, 厳密には複素線積分の知識が要るので若干ハードルが高い. 形式的にやることはできなくはないだろうけど, 学生には意味不明になるおそれも.)
もちろん, 「表」にある基本的な関数とその逆変換で済む場合にはそれを利用すれば良いと思います.
今回の試験では, 「表」をそのまま利用できない場合, 特に関数の定義が区分的に変わるような場合のラプラス変換を出題しました.
案の定, 形式的かつ強引に「表」を適用しようとして全く異なる解答に至った学生がかなり多かった模様.
(ちなみに, 各区間での関数は定数関数や一次関数で, 定義に従って積分をすればあっという間に求まる程度のものでした. 「表」と諸々の公式を複雑に組み合わせればそれでも求まるかもしれませんが, そこまでやるメリットはないし, 普通に積分すれば終わりです.)
今年度初めてフーリエ・ラプラス解析を担当しましたが, 工学系の学生であっても, このような工業数学, 応用数学に属する部分の理解は, もう少し基礎基本をきちんとやらなければいけないと思ったところです.
ラプラス変換に限ったことではないのですが, どうも基本的な数学・力学的な部分の勉強の仕方が根本的におかしいために, 機械系4力学の成績にも無視できない悪影響を及ぼしている学生も少なくないように見られます.
ラプラス変換の計算については, せめて順変換については定義に基づき計算できるよう講義中にも何度か説明をしたのですが, あまり伝わらなかったようです.
くどいようですが, これに関しては「表でしかできない」「表しか知らない」のは明らかに分かり方としておかしいので, 今後も機会があるごとにこの認識は修正していくつもりです.
2. フーリエ解析とオイラーの公式
フーリエ係数の計算は, 森岡ははっきり言って複素数形式の方が計算量が少なく楽だと思うのですが, 学生さんの意見は逆のようです.
やはり「複素数が怖い」という不慣れな感じは拭い難いようで.
とはいえ, 三角関数形式で部分積分を繰り返すことも, それはそれで凄まじい積分計算に感じられると思うので, こればかりは慣れだと思います.
3. 原理原則
上2つと関係しますが, 原理原則の理解はやはり相当程度重視すべきだと思います.
よく「工学部では計算ができれば良い」などと揶揄する声も聞きますが, 厳しいことを言うと, 現状では計算も危うい状況です.
(そもそも, 計算をするという行為自体にも原理原則の理解が必要です. 合成関数の微分や置換積分など, 関数の基礎的なことを体感的にでも理解していないとまともに使うことができません.)
機械系専門科目の教科書類にも, 理論的にどうしてそうなるのかということは工学の観点から当然書かれていますが, そういう部分は一切追わずにはなから例題や過去問の結論部分だけ暗記してやろうという学習態度がかなり横行しているように感じます.
結果, ちょっと設定が変わると何も答えられなかったり, 自分が行った実験は何をやっているのか, その背景は, といったことが全く分からないままになっている, ということが起こります.
こういう部分は, 数学の教員が基礎教育の段階から可能な限り拾っていかないといけないところだろうなとこの一年の業務を通じて感じているところです.